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京都学生演劇祭2019 参加団体 魔法の××らんど『部屋にアリが湧きました。』上演台本の改稿について

 

2019年9月16日

京都学生演劇祭 常任顧問 沢大洋

1、経緯
 まず、2019年9月9日深夜に、京都学生演劇祭2019メールアドレスへ、Twitter上で公開されていた「魔法の××らんど」上演台本(作・佐倉眞)画像に記載されたシーンが、京都市東山青少年活動センターでの上演に不適切ではないのかという問い合わせがありました。このメールには新原が応対し、台本の一部のみで未発表の作品の可否を決めることは出来ない、上演を経て、議論を行うべきではないのか、という返答をしたところ、問い合わせを行った方との和解が成立しました。
 その後、新原が問い合わせ内容の事実確認のため、「魔法の××らんど」上演台本を読んだところ、女性器の名称を言うシーン、および具体的な性行為の描写が確認されました。新原が佐倉さんへこの部分に関して、演出においてどう扱うのかを確認したところ、規制音等でごまかすことはなく、そのまま発話するという返答がありました。これを受け、新原は佐倉さんへ、上演にあたってゾーニングが必要かもしれないため、演出の変更や改稿を検討してほしい、という打診を行いました。

 翌日9月10日に、新原が京都市東山青少年活動センターへ性的描写のある作品の発表の際に適用されるガイドラインはないか、あるいは過去の事例ではどのような対応をしたのかを聞いたところ、同センターからは青少年支援を行う場である以上、未成年者が鑑賞する可能性も十分にあるため性的表現等においては一定の配慮を求めたいとは考えるが、表現の自由を守るという意味で、問題となりそうな描写がある場合には介入せざるをえないが、それは本意ではないため上演に先立って台本を読むことは行っておらず、上演後に問い合わせがあれば対応はするが、そのような理由からセンターが改稿等を要請することはない。本件に関しての対応は当事者へ一任する、という返答がありました。
 このセンターからの返答を受け、新原は「魔法の××らんど」上演台本の当該シーンに対して、青少年活動センターで演劇祭を開催するにあたっての中高生の鑑賞への配慮、および批判回避を目的とした演出の変更、改稿を佐倉さんへ要請しました。要請の結果、佐倉さんは改稿等を行えば意図した作品の上演が成立しない以上、シーンそのものを削除するという対応をとりました。また、事前にTwitter上でシーン削除前の台本を画像という形で公開していたため、公開していた台本と実際の上演内容の齟齬を生ませないために、当該シーンを削除しましたという投稿を行いました。

 この投稿の文章中に「協議された結果青少年に見せるために隠すとかぴー音入れるとかで対応できないかとなり隠すくらいなら私消します」という一文がありますが、改稿の要請はセンターとの協議の結果ではなく、新原が実行委員会からの承諾を待たずして判断し、行ったものです。京都市東山青少年活動センターから「魔法の××らんど」の上演台本や演出へ変更の要請は一切ありませんでした。

 続いて、9月15日に改めて佐倉さん、京都市東山青少年活動センター、新原の三者で話し合いを行いました。この話し合いにおいて、佐倉さんが新原からの改稿の要請が、言葉の上では提案ではあったかもしれないが、実質的には命令(圧力)であると捉えた、という発言があり、これに対し、新原が佐倉さんへ謝罪を行いました。また、この話し合いの結果、上述した、同センターから改稿の要請があったわけではないこと、改稿の要請は新原の判断であること、京都学生演劇祭として本件に関する公式声明を発表すること、新原からの謝罪文を掲載することに関して、三者間で合意しました。

2、上演について

 以上の経緯を踏まえ、改めて台本・演出、またゾーニングなどの制作的対応の協議を佐倉さんに提案しましたが、この時点で9月15日「魔法の××らんど」上演の前日であったことから、改稿後の台本での上演を行うこととなりました。
 また、改稿後の上演台本及び演出に関して、演劇祭からの事前確認は一切行っておりません。


3、今後の対応について
 常任顧問は私と新原が担当し、新原が実行委員会のサポートを行い、私は新原の指導役を担っておりました。京都学生演劇祭における決定権は学生のみで構成される京都学生演劇祭実行委員会にありますが、特に新原は委員と接する機会が多く、また、担当する業務の都合上、意思決定において、新原の意見が影響する場面が多くありました。加えて、業務内容によっては実行委員会による承認を事後に行うこともありました。こういった背景から、本件に関しても対応の速度を優先するあまり、踏まえるべき意思決定のプロセスを省いてしまったことが根本の原因であると考えております。
 また現在、本件が表現規制にあたるのではないか、という指摘があがっておりますが、表現規制にあたるのかどうかは、演劇祭閉会後になりますが、本来踏むべきプロセスである実行委員会での話し合いによって検証いたします。


 今回の件につきましてご意見を募集いたします。いただいたご意見をもとに、今後の、表現規制に関する京都学生演劇祭としての方針を形成していきたいと考えております。

ご意見はこちらのフォームよりご投稿ください。

https://forms.gle/sNdoZ3uPX2Vup9Fx7

沢大洋

​以下、常任顧問・新原による謝罪文を掲載します。

 この度は、佐倉さんはじめ京都学生演劇祭2019参加団体および関係者の皆様、京都市東山青少年活動センター、ならびにお客様へ多大なるご迷惑をおかけしまして、誠に申し訳ございませんでした。

 

 本件につきましては、私が佐倉さんへの十分なヒアリング、および関係者間での相談を怠ったことによるものでございます。事実として私は佐倉さんへ演出の変更、台本の改稿を要請いたしました。また、その要請の際に、適切とは言いがたい表現を含む言葉を使い、佐倉さんへ実質的な圧力をかけたことも事実です。経緯説明の文章にもございますが、中高生をはじめとする青少年の鑑賞への配慮、批判回避という意識が要請を行った理由でございます。

 メールでの問い合わせがあった時点で、まずは佐倉さんと共に事態の正確な把握に努め、作品の構想や台本執筆に至るまでの意志、演出意図など、なぜその言葉が書かれたのかを受け止め、そのうえでどうすべきか、どうしていきたいかを関係者と共に検討していくべきでした。冷静さを欠いた言動であったと深く反省しております。

 このような状況ではございますが、今後とも京都学生演劇祭へ変わらぬご支援、ご鞭撻をお願いいたします。

2019年9月16日

京都学生演劇祭 常任顧問 新原伶

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